フォーラム.1 司会者報告
生命・環境をめぐって
正木晴彦
横山紘一
先ず始めに午前中の2つの講演、東京大学大学院農学生命科学研究科の鷲谷いづみ教授の「生物多様性・生態系の危機と自然再生」、国際日本文化研究センターの安田喜憲教授の「風土システム」について、両先生より若干の補足説明をお願いした後に、フォーラムに入った。ディスカッスは多岐に亘り、延べ30名に及ぶ方々が発言された。紙数の都合もあるので、それらの中で特に言及者の多かった3つに絞ってレポートする。
《地球の温暖化とその影響》
最近のTV番組で、2100年に地球の温度が4.5℃上ると、りんご産地がみかん農家になるとの報道をしていた。けれども、さらに大変なのは極端な気候変動(寒冷化など)により穀物生産が不可能になることだ。3℃上ると災害が発生しうるし、5℃の変化で深層海流の循環が止まり氷河化(cf.氷河期)、5.8℃(2050−2070年?)で人口は半分以下になるとの報告あり。いずれにしても、温暖化による海面上昇等の被害は、まず貧困層に及ぶ。その点の対応を十分に考慮すべきである。
《生命環境への社会的責任》
最初の生命が38億年前に誕生してから、環境の変動に応じて、大きな絶滅の危機が6回あったが、生命体はダイナミックな変化を通じて「多様化」してきた。しかし20世紀の環境の変化は人間活動の結果であり、1年に4万種が絶滅しているらしい。(鷲谷講演)
つまり倫理的実践の主体としての人間が組織として環境破壊をしている。何とかすべきではないか。西欧の社会では「企業が環境に対して何をすべきか」を表明するのが常識である。
たとえば麗澤大学には「企業倫理センター」があり、生物多様性はもちろん、企業の社会的責任についても真剣に研究しているので、心ある企業人には是非参加してほしい。
《学問と環境問題》
CO2の値を下げる「方法」もさることながら、いま「何が」一番大切かという、もっと根本的な問題をこそ、この学会で論じ合うべきだ。生産工場化した畑など、非生命系の人は思想や文化などよりも経済優先で、宇宙ステーションや火星移住へと夢を描いているが身近な地球環境の再生にもう少し目を向けるべきである。
自然環境について考えるに際し、旧約聖書と日本書紀の相違について注目するのも有意義だ。佛教でも「山川草木すべてに佛性あり」と見なす。先進国の中で真のアニミズムを理解できるのは日本人のみではないか。
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討論の内容は期せずして文明・文化の分野にも及んで来たので、小休止の後「フォーラム2」の司会者にバトンを渡したい。
(文責・正木)